公開制限は誰のためか?

横浜市の情報公開条例の改定

権利の濫用と言うけれど
市によると、近年、大量の開示請求や業務の妨害を目的としているものなど、権利の濫用と思われる請求が繰り返されていて、担当部署がコピーなどの作業に追われ、他の業務に支障をきたす場合があるとのことです。市の報告を受けて、情報公開・個人情報保護審査会は昨年12月「権利濫用の請求を拒否できる条例上の根拠が必要」との答申を提出しました。しかし、これは請求者の意見を聞かずに進められた職員のための一方的な改正と言わざるを得ません。行政内部の事情を知らない市民が必要な文書を手に入れるのはとても大変です。知りたい事柄について行政文書を特定するには職員の協力が必要ですが、特に行政の不正を明らかにするための請求には、十分な協力が得られないことも多くあります。そのため、請求範囲を広げたり、特定の課に繰り返し請求を重ねることも少なくありません。

市民が情報を特定するのは大変
今回、審査会から特定が不十分な例として「○○に関するすべての文書」が挙げられています。開国博Y150への補助金について調査しようと開示請求を行なった際、職員とのやり取りでは何を請求すればいいのか分からず「補助金の明細に関するすべての文書」として請求を行ないました。また、住基ネットの事業費についての開示請求では、始めは「2002〜2006年の支出文書の明細」として開示を求めましたが、年度ごと1枚ずつの文書しか開示されませんでした。そのため、単年度の「事業費にかかる支出文書一切」として再度請求を行ない、紙袋二つ分が開示され、そこから必要な文書を探しました。

行政情報は市民のもの
条例に権利の濫用禁止の規定を設ければ、これを根拠にして、職員が開示請求をさらに制限してくる可能性が高いと考えます。今でも市民はなかなか必要な文書が手に入らないと感じています。情報公開条例の目的が「市民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な市政の推進」であることを再確認し、まずは市民に信頼される情報公開のあり方をめざすべきです。条例改定で情報開示の状況がどのように変わるのか注視していく必要があります。