市民後見人の養成を考える

成年後見制度は、認知症高齢者や知的障害・精神障害などにより、判断能力が不十分な本人に代わって、法的に権限を与えられた後見人等が財産管理や福祉サービス、入院、入所等の契約を行い、安心して生活ができるように支援する制度です。この制度は、サービスが契約によって供給されることになった介護保険制度とともに2000年に開始されました。

横浜家庭裁判所管内の成年後見制度の申立件数は年々増え、2010年には約3000件と、制度創設時の約5倍になっています。成年後見制度の利用が必要な人の数は、人口の1%程度と言われています。横浜市の人口369万人の1%は約3万7千人です。申立累積件数約9000件と比較すると、必要だが利用していない人の数は2万8千人に上ります。

こうした潜在的ニーズに対応するために昨年から市民後見人養成・活動支援事業が始まりました。昨年10月から半年の養成研修を受講したのは88人、そのうち45人が4月から1年間の実務実習に入ります。その後市民後見人候補者として名簿登録をして、家裁からの選任を待つことになります。受任調整会議が被後見人と市民後見人とのマッチングをして家裁に提案する予定ですが、実際に選任されるのは1~2名と予測されています。

後見人による業務上横領などの不祥事が報道されるなかで、家裁が後見人の選任に慎重になるのは当然のことかもしれません。市民後見人は個人受任とのことですが、たとえ研修を受けたとしてもその後のサポート体制がなければ活動は難しいでしょう。鎌倉市で市民後見人の研修を終えて、福祉クラブ生協の法人後見の活動している仙田みどりさんは、専門家のサポート体制の重要性を強調しています。

 判断能力が低下した人に寄り添って財産管理など契約等のサポートを行うのはとても大変な活動です。報酬を度外視してこうした活動をしようとしている社会貢献意欲の高い方々の力を活かす道を考える必要があると思います。横浜市はこの養成研修に年間3400万円を投じています。市民後見人として登録した人たちが、弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門家と連携して滞在的ニーズに対応できるシステムをどう構築できるのか、これからの課題です。