なぜ急ぐ、新市庁舎建設
横浜市では市議会の「新市庁舎に関する調査特別委員会」の審議等を経て、3月末に「新市庁舎整備基本計画」が発表される予定とのことです。
2012年12月27日から2013年1月28日まで実施された「新市庁舎整備基本構想(案)」に対する市民意見募集では、新市庁舎整備に反対・否定的な意見が294名中95名と最も多くなっています。その理由としては、財政状況が厳しい中で事業費が過大であること、他事業を優先すべきこと、現庁舎が耐震補強済みであり現状で十分なことなどです。
しかし、横浜市は現庁舎の課題である市役所機能の分散化の解消のためには新市庁舎整備は必要不可欠であるとし、シミュレーションの結果、現市庁舎がある港町地区ではなく、2008年に土地を取得した北仲通南地区に建設することとし、基本計画を策定しました。
基本計画について4月に市民の意見募集を実施するとしていますが、北仲通南地区への新市庁舎建設が前提となったものです。また、事業期間は2020年の東京オリンピックまでに完成させるとの林市長の方針のもとに8年から6年に短縮されています。
基本計画の北仲南地区の整備案を市民意見募集で示された基本構想と比較すると、賃貸オフィス床を整備しないとしたため、建設する床面積は減っているにもかかわらず、建設費・設計費は約603億円から約616億円に上昇しています。また、トータルの一般財源支出は、約251億円から約280億円に、市債返還額は約612億円(市債発行額457億円)から約651億円(市債発行額487億円)に膨れ上がっています。
市は一般財源負担や市債償還について、現状維持にかかる民間ビル賃貸料等をみなし収入とすることで、事業開始から54年(開業から48年)でマイナスはプラスに逆転すると説明しています。しかし、約50年以上もの間、一般財源から新市庁舎整備の費用を出し続け、市の財政を圧迫することになるのです。また、工期が短縮されることで地元業者を優先した発注が難しくなる懸念もあります。現市庁舎がある関内駅周辺地区の活用方法も具体的とは言えず、まちづくりに向けた議論もこれからです。
オリンピック前はさらに資材や人件費の高騰が予想され、被災地の復興が遅れるとの懸念が語られるなかで、市民の合意形成が不十分なまま、前のめりに新市庁舎建設を急ぐことには疑問を感じます。