山下ふ頭の再開発は基本計画から見直すべき!

山下ふ頭再開発のアンケート付きリーフレット

現在、横浜市は山下ふ頭の再開発について、市民から意見を求めるアンケートを実施しています。2021年12月23日から2022年6月30日までの期間で、市民をはじめ市外在住者や事業者などからの意見を求めています。この手順について疑問に思います。まずは市民の意思を無視してカジノ誘致を進めようとした経緯を検証し、再開発計画を根本的に見直すべきです。

マスタープランの見直しを

アンケート募集のリーフレットによると、2015年2月に策定した「横浜市都心臨海部再生マスタープラン」と同年9月に策定した「横浜市山下ふ頭開発基本計画」が前提となっています。基本戦略のひとつは「世界中の人々を惹き付ける拠点・空間の形成」で、「IR(統合型リゾート)とは、カジノ施設及び会議室施設、宿泊施設、大規模集客施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設を指します」と説明しています。2015年4月から5月にもアンケート調査を行いましたが、多くの市民からカジノ誘致反対の意見が寄せられました。これに対して市は「カジノも含む統合型リゾート(IR)は、都心臨海部を再生・機能強化していくことや、国際的な観光・MICE都市としての位置づけを高めるための有効な手段のひとつであると考えています」と回答しています。林前市長は2017年市長選の直前に「カジノ誘致は白紙」と言い出しましたが、それまでは誘致に積極的な発言をしていました。IR収入の70~80%はカジノ収入であり、カジノ抜きでは採算が取れないという事業計画でした。今回のアンケートは、カジノ誘致を見込んだこのマスタープランが前提となっています。まずはマスタープランの見直しから始めるべきだと考えます。

 コロナ禍で大きく変わった社会状況

2019年末から始まった新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、2年以上が経過しても未だに収束の目途が立っていません。ワクチンが開発されましたが、感染予防の有効期間は短く、3回目接種が進められています。諸外国のコロナ対策を見ても正解はないと思います。この間、リモートワーク、オンラインでの会議や講演会などが定着してきました。一方で対面でのコミュニケーションの大切さが再確認されましたが、それは一か所に大勢の人を集めることではありません。MICEの必要性は再検討する必要があります。

気候変動対策は待ったなしの状況

近年、日本では集中豪雨による被害が多発しています。世界的にもこのまま地球温暖化が進めば、南極の氷が解け海面上昇により冠水する地域が増えて、農業や漁業を始め人類の生活に多大な損害を及ぼすと危惧されています。また、開発による自然破壊は新たな細菌・ウイルス感染症のリスクにつながると言われています。大規模開発に経済効果を期待する産業構造、社会構造の変革が求められています。

マスタープランを策定した2015年からは大きく社会・経済状況が変わっています。山下ふ頭の再開発については、持続可能な社会の構築というコンセプトを確認し、多様な市民と意見交換して基本計画の見直しから始めるべきです。

*MICE:Meeting(会議・セミナーなど)、Incentive tour(研修・招待旅行など)、Convention(国際会議・学会など)、Exhibition/Event(展示会・見本市など)の頭文字をつなげた造語