市長選公約「3つのゼロ」を点検・評価

2025年8月には横浜市長選挙があります。この3年間の山中市政について考えたいと思います。まずは市長選公約の「3つのゼロ」について、点検・評価を行いました。

「子どもの医療費ゼロ」については、2023年8月から中学生まで負担ゼロになりました。神奈川県内の自治体では、川崎市が小学4年生以上が1回の通院に500円負担、湯河原町が中学卒業まで負担ゼロ、それ以外の自治体では高校卒業まで負担ゼロとなっています。高校卒業まで無償が全国的な流れです。一方で、過剰な受診が心配されます。過剰な薬の投与や治療は問題です。また自己負担がなくても医療費は発生するわけで、過剰受診は地域医療を圧迫する恐れがあります。急速に少子高齢化が進むなかで、適正な医療と費用負担は国レベルでも大きな課題です。

「出産費用ゼロ」については、2023年4月から国の出産育児一時金が42万円から50万円に引き上げられました。横浜市は2024年4月からこれに加えて上限9万円を助成しています。市の調査によると市内の出産費用は平均約55万円ですが、助成金が増額されると出産費用も上がるという傾向があります。国は2026年度からの保険適用を検討しています。これが実施されれば市の助成制度も変わることになるでしょう。産科、小児科の不足という問題も深刻です。

「敬老パス 75才以上自己負担ゼロ」については、市はICカード化によって得た情報を分析した結果を公表しています。敬老パスを持っている人は持っていない人より約1.2倍外出頻度が高く、介護認定を受けている人が少ないので、敬老パスが高齢者の健康維持に寄与しているとしてます。住んでいる場所によって利用する交通機関は異なります。敬老パスの交付率は港南区が最高65.22%、瀬谷区が最低で36.81%、平均50.9%です。約半数の人はバスや地下鉄を使わない或いは使う機会が少ないわけです。また市営バスの減便が続いています。10月からは今年に入って3回目の減便が実施されます。そのためか高齢者が増えているにも関わらず交付率は少しずつ下がっています。運転手不足も深刻です。早朝や夜間、休日勤務などに見合った給料が支払われないので、退職者が増えていると言われています。敬老パスが介護予防につながっているという評価に見合った事業運営とは思えません。また、高校生や大学生がいる家庭からは、通学の交通費の負担が大きいという声があります。市長選の公約にとらわれず、適正な受益者負担と公平性を考慮して、持続可能な制度にする必要があります。