報道記事への横浜市の介入
昨年、横浜市は5つの報道記事に対して「削除や公平性を求める」文書を交付しました。
10/25の共同通信の「東京から横浜に引っ越したら保育料が2倍!」という記事に対して、横浜市の保育料がことさら高いという印象を誘導するとして削除を求めました。これに対して共同通信は「東京から横浜に引っ越したら保育料が激増!子育て施策で自治体は税収格差とどう闘うか」にタイトルを変更して再度配信しました。
11/20と12/11の神奈川新聞の横浜国際プール再整備計画案に関する記事に対しては、プロバスケットボールBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」のための再整備という一方的な見解で、読者に偏った印象を与える内容だとしています。
12/5の神奈川新聞の「開かれた横浜市庁舎を求める会」の請願書提出に関する記事に対しては、執務室の施錠はセキュリティの向上のためてあり、誰でも入館手続きをすれば入館可能。記事では「横浜市庁舎の閉鎖性は他自治体と比較して突出している」とあるが、事実確認を行った形跡は読み取れない、極めて一方的で読者に誤解を与えかねないと言っています。
12/10の山下ふ頭再開発検討委員会に関する神奈川新聞の記事に対しては、事業計画等へ市民参加の在り方について委員会の少数意見を重視した記事内容だとしています。
横浜市は4件の神奈川新聞の記事に対して、「公平性を担保した記事掲載」を求め、文書での回答を要求しました。
山中市長は当初、市の文書の存在は知らないと自らの関与を否定していましたが、1/22の定例会見では、「抗議文ではないというのが文書を見た印象」「疑義があった場合あるいは市民に誤解を与えるような表現があった場合に質問することはあってもいい」と述べています。報道機関への圧力ではないということを主張した発言だと思います。2/13の定例会見でも同様の主張を繰り返し、記者からの「あまりにも権力に対して無自覚では」という問いには答えず、今後も同様の文書を出す可能性を否定しなかったそうです。文書を発信した報道担当部長は、圧力をかける意図はなく、記者の指摘に「そういう考えもあると今は受け止めている」と述べたそうです。
報道内容に事実誤認がないにもかかわらず、自分たちの意に沿わない、気に入らないからと市がクレームをつけ文書で回答を求めるという行為は、「忖度」の強要につながると思います。文句を言われないような表現にしようということになりかねません。公権力による圧力と受け取られる行為は慎むべきです。市長や担当職員の認識には、疑問を抱かざるを得ません。神奈川新聞は「報道の委縮」を目的とした圧力と判断し、市に求められた文書での回答を保留しています。