判決は園児や保護者の不安を配慮
4つの市立保育園の園児と保護者が民営化の取り消しを求めた訴訟で、横浜地裁は、横浜市の性急過ぎる民営化の手続きは違法であるとの判決を言い渡しました。保育園民営化の過程で自治体の手続きの違法性について明確に認定したのは全国でも初めてのことです。
民営化そのものは違法とは言えないとしながらも、子どもたちが継続して同じ保育園で保育を受けることを法的な権利として認め、早急な民営化によって子供や保護者が受ける不利益に対して、市が民営化の目的とする「多様なニーズに応えるため」という主張は、合理的な理由にはならないとしています。
また、園の引き継ぎについては、6年かけて民営化した保育園の例や、同じ3ヶ月で民営化した大阪の高石市や大東市では混乱があったことを挙げ、「3ヶ月あれば民営化には支障がない」とした市の判断には根拠がないとしています。
保育園が変わるということは、利用している子供や保護者にとっては日々の生活と密接に結びついており、その影響は大変大きいものです。子供と保護者が十分理解し納得した上で、時間をかけた無理のない移行が必要です。一人一人の個別的な対応が必要な乳幼児保育に理解を示したこの判決は大変評価できます。
疑問の残る移管先法人の選考
しかし、横浜市会はこの判決を不服として控訴することを賛成多数で可決しました。ネットの若林市議は移管先法人の選考過程に疑問があること、新たな争点を提示できなければ市民の税金を使って控訴すべきではないことを主張しました。移管先を決める法人選考委員会の議事録を見ると、移管先法人の財務状況の課題や法人監査において5年間に渡って要改善事項が指摘されているにも関わらず未改善だったといったことが報告されています。民営化そのものを否定する訳ではありませんが、今回の保育園の早急な民営化がいったい誰のためのものだったのか疑問です。
何のための民営化か?
市は「多様なニーズに応えるため」を民営化の最大の理由としていますが、なぜ公営ではこれができないのでしょうか。延長保育や一時保育等の多様なニーズの部分は安い賃金で民間に任せて財政再建を図るというのでは、市民の理解は得られません。
市は今回の判決を重く受け止め、今後は保育園の民営化においては、子どもと保護者の不安解消を最優先させ、信頼関係を築きながら進めていくべきだと考えます。