都市計画提案制度の「事前調整」は、市民を置き去りにした闇交渉

開発業者は提案の取り下げを決定

旧横浜プリンスホテル跡地に1,350戸の高層マンション群を建設する都市計画提案について、開発業者は提案を一旦取り下げることになりました。取り下げ理由は、風致地区の高さ制限を守るべきという周辺住民の声、都市美対策審議会の「周辺と不調和だ」という指摘、公道化や貴賓館の改修に予想以上の費用がかかること、建築業界の景気が低迷していてマンションが売れ残っていることなどです。今後の方針は未定だということですが、今回の都市計画提案制度を使った開発の進め方について、市民の側から見た問題点を指摘したいと思います。

市が高さ制限緩和の方法を指南 
都市計画提案が提出されるまで2年以上に渡って横浜市と開発業者は「事前調整」を行っています。事前調整の記録の情報開示を求めたところ、3日分の業務日誌が出てきました。2年間でたったの3日分?しかも開発業者の資料は、「技術的なノウハウが含まれ、事業活動が損なわれるおそれがある」等の理由で7割が黒塗りでした。しかし、市が開発業者に提示した文書に、高さ制限緩和の具体的な条件が示されていたことが明らかになりました。高さ制限15mの風致地区については「種々の地域貢献を前提に、31mまでとすることで検討していただきたい」、高さ制限20メートルの住居地域についても同様に、「45mまで」としています。
 さらに、「相当規模の居住人口が見込まれることから、必要施設の立地を行っていただきたい」として、「保育所・学童施設」「商店等生活利便施設」を挙げ、地域貢献施設としては、「高齢者対応福祉施設」「区版市民活動支援センター」を指示しています。

市民を置き去りにした闇交渉
 市は地域住民と協議もせず、業者に条件提示をしていたわけです。市民との協働が大切と言いながら、勝手に「区版市民活動支援センター」なるものを提案しています。開発業者も、説明会ではどれくらいの人口増を見込んでいるかという市民からの質問に対して、検討中として数字を挙げなかったのに、裏では市とこのような具体的なやりとりをしていたわけです。
この問題を取り上げた朝日新聞の記事の中でも、法政大学の五十嵐教授が、「業者に緩和条件を示す場合には、必ず地域住民にも周知し、意見を聴くのが行政の役割。業者との2者間でのやりとりは明らかに闇交渉で、不適切だ」と指摘しています。

市民への情報提供は行政の役割 
 1,350戸の大規模開発が、周辺地域へ様々な影響を及ぼすことは明らかであり、まちづくりの根幹に関わる事業です。一方的な開発業者からの情報だけでなく、総合的なまちづくりの視点から開発について検討できるように、行政は積極的に地域住民に情報を提供するべきです。まちづくりに関心を持つ市民の活動をサポートするのが行政の役割のはずです。
磯子市民ネットは、今後も情報を収集し市民に公開するとともに、市民参加のしくみを提案していきます。