サン・グループ事件学習会に参加して

~社会的弱者の人権を守るために~

 サン・グループ事件弁護団団長田中幹夫氏の話を聞いた。これは肩パット製造会社「サン・グループ」で働いていた知的障害者に対して、暴行や監禁、長時間労働、ただ働き、年金の横領など様々な虐待が繰り返されたという事件である。従業員や家族は、就職に関係した県の更生施設や福祉事務所、障害福祉課、国の職業安定所や労働基準監督所などに対して救済を訴えたにもかかわらず、10年以上に渡って適切な対応がとられず、障害者が命を落とすという悲惨な結果を招いた。この裁判は、虐待した会社社長とともに国や県の機関に対しても責任を認めた点で画期的な判決と言われている。弁護団が自己表現できない障害者と信頼関係をつくりながら丁寧な聞き取りをし、虐待事件について行政の危険防止責任を明らかにしたことの意味は大きい。

 大和市のベビーホテル幼児虐待死事件でも、県、市、児童相談所、警察が、1年も前から施設に問題があることを感知しながら、事件を未然に防ぐことができなかった。縦割り行政や国・県・市の機関の連携の問題など、行政組織の課題は多い。また苦情解決制度として横浜市福祉調整委員会、神奈川県運営適正化委員会があるが、虐待という深刻な問題について有効に対処し得る権限を持つものではない。

 特に知的障害者、乳幼児、認知症高齢者など、意思表示が困難で訴えに信憑性がないと捉えられがちな人たちをどう守っていくか。施設や事業所を地域に開かれたものにし、行政だけでなく市民が日常のなかで見守っていくことが大切である。