福祉施設・サービスの質を確保するためには

~相談があった事例から見えてきた実地指導の限界~

障がい者や高齢者などの福祉施設・サービスの事業者は、社会福祉法人だけでなくNPO法人や株式会社など多様化し数も増えています。そうした中で利用者に対する虐待や補助金の不正受給などのニュースが後を絶ちません。磯子市民ネットに障がい者支援施設の利用者から運営主体がかわって運営が不透明になりサービスの質も低下したと相談がありました。この事例を通して福祉施設・サービスに対するチェック体制について考えてみました。

苦情解決の窓口

苦情対策機関としては、事業者が設置する第三者委員会、市の福祉調整委員会、県の福祉サービス運営適正化委員会、区の高齢・障害支援課、市の健康福祉局などがあります。相談があったケースでは、事業者は第三者委員会を設置しておらず、担当の計画相談員に相談しても対応してもらえず、磯子市民ネットを通じて市当局に要望書を提出しました。福祉調整委員会に寄せられた平成29年度の苦情・相談総数は622件ですが、委員会で面談・相談等の対応をしたのはわずか2件です。県の福祉サービス運営適正化委員会の平成29年度の苦情受付件数は120件、その内横浜市の事業者に対するものは30件です。福祉事業者の不正行為のニュースが新聞に掲載されると市当局に電話が殺到するそうです。苦情対策機関が十分に機能していないからではないでしょうか。

運営チェック体制

運営のチェックは社会福祉法人については定期的に監査が実施されます。その他の事業所については実地指導が行われます。実地指導で著しい指定基準違反等が確認された場合は監査に切り替えますが、これはかなり稀なケースのようです。実地指導は3、4人で事業所を訪問し1日がかりで調査します。調査結果は要報告事項と通知事項として事業者に提示され、前者については改善報告書の提出が求められます。

事例から見える実地指導の課題

相談があったケースでは6年前の実地指導でも防災訓練や苦情解決体制の未整備が指摘されていましたが、改善されずに再度指摘を受けていました。6年間放置されていたわけです。運営基準に反していても市にできることはあくまでも指導であり強制力はありません。また、人員配置が基準を満たしていない等の理由で自立支援給付費等5000万円以上の返還を求められていますが、これは不正請求ではなく計算ミスという扱いです。明らかな法令違反の証拠がない限り監査に切り替えて指定取り消し等の厳しい処分はできないということです。

市民・利用者への情報公開が必要ではないか

市はかなりの労力と時間をかけて実地指導を行っています。大半の事業者は指摘を受けた事項について改善の努力をすると思います。しかし、一部の悪質な事業者はのらりくらりと指導を受け流したり、あるいは実体のない体裁だけを整えることになります。市は改善報告書どおりに実行されているかを確認することはしません。対象事業者が多くて手が回らないのが実情です。実地指導を有効なものにするためには、市民・利用者に調査結果と改善報告書を公表するべきです。市当局は法律に書いてないからできないと言っていますが、横浜市が独自でルールをつくることはできると思います。利用者と情報を共有し、一緒により良いサービスを築いていくことが大切だと考えます。