中学校給食「デリバリー方式」による「全員給食」は疑問?

横浜市は2022~25年度の中期計画の素案を発表しました。その中で中学校給食は「デリバリー方式」による「全員給食」をめざすとしています。現在のデリバリー方式の供給体制を拡充し、2026年度以降は「選択制」から「全員制」に転換するという方針です。

横浜市の中学校給食は、21年度から学校給食法に則った「給食」にしたことで、保護者が負担する給食費は小学校と同様に食材費のみとなり、また、就学援助制度の対象になりました。働く保護者のお弁当づくりの負担軽減と、7人に1人という子どもの貧困問題、給食だけがまともな食事というような状況に対しては、一定の対策になっているはずです。ところが、新聞報道では7月時点の喫食率は28.8%と低迷しています。

藤沢市は、横浜市と同様に「デリバリー方式」の中学校給食を選択制で実施しています。委託事業者は、横浜市でも委託している2社が請け負っています。献立は市の栄養士が作成し、食材は原則小学校と同じものを使っていますが、喫食率は25~30%です。武蔵野市では、センター方式で小学校給食と同じものを中学校給食として提供しています。選択制ですが、喫食率は95~96%ということです。食材については、有機栽培の農産物の導入に取り組んでいます。質の高い給食は当然喫食率が高くなります。

多くの市民の希望は小学校のような給食をみんなで一緒に食べるということでした。しかし、教育委員会は「自校方式」と「親子方式」は7割以上の学校で実施困難とし、「センター方式」については費用がかかり過ぎるとしています。ちなみに大阪市では5年間かけてデリバリー方式から親子方式か自校方式に移行したという事例もあります。

中学生になると個人差が大きくなります。現在のデリバリー給食でも、ごはんを「小」にしても食べきれないという生徒もいれば、「大」でも足りないのでおにぎりを持参しているという話を聞きます。自分に合った食を選択する、栄養のバランスを考えるなど、給食には食育としての目標があります。全員喫食ではなく自分で選択できる制度にするべきです。

農業や食材の生産・流通に関心を持つということも食育の重要なテーマです。近年の気候変動は農業・漁業へ多大な影響を及ぼしています。国は「みどりの食料システム法」を制定し、環境保全のために2050年までに有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)拡大するとしています。オーガニック給食の取り組みも今後の課題にしてほしいと思います。

また、コロナ禍で生徒たちは「黙食」を強いられていますが、本来は友だちと語り合いながら楽しく昼食をとることも大切です。ところが、給食時間はわずか20分です。教育委員会は昼休みも引き続き食べていてもいいと言っていますが、実際には難しいようです。せひ改善するべきだと思います。

「デリバリー方式」を「全員給食」にする意義は見い出せません。市長選の公約実現のためだけの政策ではと言わざるを得ません。