訪問介護報酬引き下げ 地域福祉を崩壊させる制度改定!

介護保険制度は3年ごとに見直しが行われますが、2024年の改定で、訪問介護の基本報酬が引き下げられることが明らかになりました。

介護報酬全体では1.59%引き上げられますが、訪問介護については身体介護、生活援助ともに引き下げとなります。訪問介護事業が他の介護サービス事業に比べて利益率が高いということに起因しているようです。しかし、これはサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に併設されている訪問介護事業者が集合住宅内で効率よく動けることによるもので、地域を一軒一軒まわる事業者とは状況が全く異なります。両者を同じカテゴリーで評価するのが、そもそも間違っています。在宅介護の担い手は非正規のヘルパーが大半で、移動時間や待機時間は無給、利用者側のキャンセルによる休業手当もありません。介護職員の平均給与は、2022年時点で全産業の平均より6万円以上低い状況でした。離職者が入職者を上回りヘルパーの人手不足は切実で、若い人が入らず高齢化が深刻です。事業者の倒産も増えています。

政府は、介護報酬が下がっても職場環境の改善や研修の充実などの要件を満たして「最上位の処遇改善加算」を取得すれば、介護報酬の減額分は十分に補填されると説明していますが、事業者は全体としてマイナスだと試算しています。また、在宅福祉の担い手は小規模事業者が多く、最上位の加算が受けられない場合もあり死活問題です。「大規模化による効率化」という意図なのでしょうか。「年をとってもできる限り自宅で暮らしたい」という人々の意思を軽視していると言わざるを得ません。

神奈川ネットと運動グループが経年で取り組んでいるアンケート調査では、「将来介護が必要になったとき(または現在介護保険を利用中)に一番使いたいと思うサービスは何か」という問いに対して、毎回第一位になるのが「定期的なヘルパー訪問」です。

2000年に介護保険制度が始まった当初、税金による措置ではなく、利用者がサービスを選べるという理念でした。利用者の選択肢を狭め、地域で在宅福祉を担う事業者の実態を無視した改定に対しては、「地域福祉の崩壊を招くのでは」と強い危機感を抱きます。