「権利」の文言がない「横浜市こども・子育て基本条例案」⁈

6月3日の市会常任委員会で「横浜市こども・子育て基本条例案」が可決されました。昨年4月に国の「こども基本法」が施行されたことを受けて、市でも条例を制定しようという動きですが、「権利」の文言が明記されず、当事者である子どもたちの意見を十分に聞くこともなしに、拙速に進めようとしています。

1989年に国連総会で「子どもの権利条約」が採択され、1994年に日本も批准しました。川崎市では国に先駆けて、1998年から条例制定に向けて全庁的体制で検討を始めました。子ども向けのパンフレットをつくり、「子ども会議」「市民サロン」「子ども集会」「市民集会」など、さまざまな手法で子どもたちの意見を聞き、骨子案の段階でも子どもや市民の意見・提案を聞き、条例制定に至りました。2000年12月に「川崎市子どもの権利に関する条例」を制定、制定後も市民集会や学習会で周知をはかり、2001年4月に施行しました。

川崎市の条例が子どもの権利をいかにして保障するかという主旨で書かれているのに対して、横浜市の条例案は「こども及び子育て世代に選ばれる、こどもと子育てに優しい都市横浜の実現に寄与することを目的とする」と言っています。「権利」という言葉は一言も出てきません。これについては上位法である「子ども基本法の精神にのっとり」と規定しているので問題ないと説明しています。子ども基本法のもととなった「子どもの権利条約」にも言及していません。これも上位法にあるから必要ないと言うのでしょう。横浜の条例案は国の法律に準じて取り敢えずつくったとしか思えません。子どもの貧困、虐待、いじめなどが深刻な社会問題になっているなかで、基本理念が見えない、制定への熱意が感じられない残念な条例案と言わざるを得ません。