放射性廃棄物から原発について考える
左の写真は宮城県登米市の浄化センターの敷地内に保管されている福島第一原発事故によって発生した放射性廃棄物です。10棟のビニールハウスの中にあるのは、409トンの指定廃棄物です。指定廃棄物とは、福島第一原発事故に由来する放射性物質で汚染されたごみの焼却灰、下水汚泥、浄水発生土、稲わら、堆肥などのうち、8,000ベクレル/㎏を超えた濃度のもので、これは国の責任で処理することになっています。登米市では2,235トンの汚染稲わらが民有地の農家にも指定廃棄物として保管されています。登米市は仙台牛の産地で、稲わらは牛のエサになります。環境省のホームページによると宮城県全体の指定廃棄物量は2,827.9トン。県内の約80%が登米市にあることになります。もちろん県としては福島県が一番多く、栃木県、千葉県、茨城県、宮城県の順になっています。全国合計459,220.4トンです。横浜市にも道路上の汚泥や市立学校雨水利用施設の汚泥が約2.9トン保管されています。指定廃棄物の処理方法は未だに決まっていません。
ビニールハウスの外に置かれているのは、8,000ベクレル/㎏以下の汚染稲わらや堆肥で、一般廃棄物として自治体が処理することになっています。登米市には2022年末時点で1,485トンが保管されています。市は処理計画を作成し、保管量を削減してきました。400ベクレル/㎏以下のものは、すき込み処理として牧草地に散布、耕起し土壌に還元します。400ベクレル/㎏超えのものは、有機センターの牛糞や稲わらと混ぜて400ベクレル/㎏以下の堆肥として市場に流通させています。
さらに「未指定廃棄物」というものがあります。8,000ベクレル/㎏超えであったが、風評被害や管理負担を懸念して国に指定を申請しなかったものです。昨年、宮城県大崎市が県外焼却を始めて問題になりました。2017年7月時点で宮城県内には578トン、大崎市には176トンが保管されていたと推測されています。大崎市は汚染値が減衰した廃棄物を一般ごみに混ぜて焼却してきましたが、市内では処理しきれないとして、県外事業者に焼却を委託しました。
そもそも8,000ベクレルをいう基準値は原発事故後に決められたものであり、申請主義の枠外のものもあり、放射性廃棄物の実態は曖昧なまま、自治体は長期保管や処理に苦慮しています。
新聞報道によると、各地の原発で敷地内に「乾式貯蔵施設」を建設する計画が進んでいるようです。使用済み核燃料の燃料プール(湿式)が数年で満杯になり原発が稼働できなくなることを回避するために、プールで7年ほど冷やしたあとに乾式貯蔵庫に移して保管するということです。
指定廃棄物の処理は未定、福島第一原発の廃炉作業は困難を極め、核燃料サイクルは頓挫し、放射性廃棄物は増え続けるが、最終処分場はないという状況で、原発の再稼働・新設を進めようとしている国のエネルギー政策は大丈夫なのか疑問です。