「基地国家」と 日米地位協定

明田川融先生(法政大学教授)による日米地位協定を学ぶ学習会に参加しました。日米地位協定については、米軍基地周辺で米兵による犯罪が起きるたびに問題点が指摘されてきました。最近では沖縄での米兵少女誘拐暴行事件の情報を政府や県警が沖縄県に伝えず、起訴から約3カ月後に報道で明らかになりました。問題の根源はどこにあるのか学びたいと思いました。

米軍と国内法の関係について、NATO加盟国やオーストラリアでは基本的に受入国の国内法が適用されますが、日本政府の見解は「個別な取り決めがない限り、受入国の法令は適用されない」というものです。米軍には航空法が適用されず、低空飛行が度々問題になっています。8月3日には海老名市の田んぼに米軍のヘリコプターが不時着しました。

フィリピンでは米軍基地は撤退していますが、2013年に米軍艦船がユネスコ自然遺産の岩礁を破壊した事故で国内法に基づき罰金を請求し、米側もこれに従って多額の補償金を支払いました。日本では米軍基地から放出された泡消火剤によるPFAS(有機フッ素化合物)汚染について、基地に立ち入り検査をすることもできません。

日米一体となった軍備増強が進んでいます。「相互運用性」を強化するとして、合同訓練や演習、施設の共同使用など、さまざまな方面での共闘が進んでいます。特に沖縄・南西諸島では台湾有事を想定して、長距離ミサイルが配備されています。沖縄が再び本土防衛の防波堤になるのではと危惧が広がっています。神奈川県にも沖縄に次いで12の米軍基地があります。横須賀海軍施設は原子力空母ロナルド・レーガンの母港であり、キャンプ座間には米陸軍第一軍団司令部が設置され、厚木海軍飛行場にはオスプレイが飛来し、横浜ノースドックには小型揚陸艇が配備され実戦的な機能が強化されました。日米地位協定では「米軍が希望すればどこでも基地にできる」いわゆる「全土基地方式」が原則で、主導権は米軍にあります。

1960年の日米安全保障条約改定時に、在日米軍が日本国内で装備や施設等に重大な変更を加える場合や戦闘行動の基地として国内の施設等を使用する場合は、日米両国が事前協議を行うと交換公文に明記しました。岸田首相は昨年3月に国会で、在日米軍基地からの軍事作戦行動で米軍が出撃する場合、事前協議で「わが国の自主的な判断の結果として、イエスと答えることもあればノーと答えることもあり得る」と答弁しました。一方で米国のシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIC)は、事前協議は米国の意図を日本に通知するもので、出撃の可否を日本が判断できるものではないと言っています。「事前協議」については、安保反対の世論に対して対等性を主張するための「言い訳」として使われたという見方があります。

台湾有事を回避するために何ができるか? 明田川先生は北太平洋地域を軍備制限地帯にすることを提案されています。現状を考えると実現は困難に思われますが、武力衝突を避けたいというのは、すべての国の人々の共通の思いです。

余談ですが、4月に屋久島に行ったときにタクシーの運転手さんから聞いた話です。昨年11月に屋久島沖にオスプレイが墜落して、米軍や自衛隊が来て漁港を占拠して行方不明者の捜索等が行われたが、自衛隊員は公民館に宿泊し、米兵はホテルを利用したとのことでした。自衛隊と米軍の関係がわかるような話だと思いました。

8/24 明田川先生による日米地位協定の学習会