分権・自治の逆行する「改正地方自治法」

「改正地方自治法」に関する学習会に参加しました。講師は立憲民主党政務調査会の横田省三さんです。1999年に成立した「地方分権一括法」では、国と地方は「上下・主従」から「対等・協力」の関係に変わり、機関委任事務(国から地方に委任される事務)が廃止され、自治事務と法定受託事務に整理されました。地方の主な役割は住民の福祉の増進を図ることと位置付けられました。しかし、税財源の移譲などが進まず道半ばの状況でした。

そのような状況の中で構造改革が叫ばれ、地方分権に逆行するように新自由主義・新保守主義に基づく地方制度の再編や自治体間競争論、自己責任論が台頭し、市民は地方自治の主役からサービスを受ける「お客さん」と見なされるようになりました。また、沖縄では、地方分権とは名ばかりで市民の意思を無視した辺野古の埋め立てが進んでいます。

国は今年6月にコロナ禍における国と地方の指揮系統の混乱を理由に「改正地方自治法」を成立させました。「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生のおそれがある場合」には、国の権限が強化され国からの要求や指示が明記されています。デジタル化により個人情報が国に一括収集されます。非常時には「想定していない事態」に対処する必要があるとしていますが、想定できないのであれば、災害対策基本法や感染症法、新型コロナ特措法など個別法で対応できます。必要に応じて個別法の改正で対処するべきです。「発生のおそれがある場合」など曖昧な要件で、各大臣の一任で判断されるのかと不安を覚えます。国会の事前関与もなく閣議決定で発動可能です。そもそも市民から、地方からのボトムアップで国が動くべきであり、「国がいつも正しい」という発想が危険です。コロナ禍での一斉休校やアベノマスク、熊本地震での避難指示などの事例を見れば、国よりも当該自治体の方が状況を的確に把握し対処できることは明らかです。国は地方の要請に応じて支援するべきです。この改正により自治体が災害時に国の指示待ちに陥ってしまわないかと懸念されます。

また、市町村は、住民福祉の増進を効率的・効果的に図るために「指定地域共同活動団体」を指定することができるとしています。市民団体は行政の下請け機関ではありません。どのように選定するのかなど疑問が満載です。

1970年代から「地方の時代」をスローガンに国がコントロールする中央集権に対して参加型分権の地域主義を主張する動きが広がりました。神奈川ネットワーク運動は生活者市民が政治に関わることが大切であると考え、1983年に川崎市議会に最初の議員を送り出し

11/17開港記念会館にて改正地方自治法学習会

、1984年にローカルパーティ(地域政党)神奈川ネットワーク運動を設立しました。まさに地方自治の申し子です。分権・自治に逆行する問題の多い「改正地方自治法」に対して、今後も異議を唱えていきます。