市長選を終え、次の4年に向けての懸念

横浜市長選挙は現職の圧勝でした。前回の山中氏の当選は、カジノ誘致阻止の市民の意思と自民党が林氏と小此木氏に割れたことに加えて、共産党の支援が大きかったと思います。今回は、立憲県連支持、自民市連支持、公明横浜総支部支持、連合神奈川推薦、共産党は候補者を擁立しませんでした。立憲民主党は前回は党推薦でしたが、今回は山中氏の意向で県連支持にしたそうです。さらに後援会会長は医師会会長、副会長は港運協会会長の藤木幸太氏、相談役に商工会議所会頭と横浜港振興協会会長の藤木幸夫氏(「ハマのドン」と言われ、山中市長実現の功労者)と、いわゆる「オール横浜」体制でした。

地元経済界への手厚い配慮に加えて、市民サービスとしては、「小1の壁」対策として、学校での早朝の預かりと、長期休暇時に放課後児童クラブ・キッズクラブに通う児童への昼食弁当提供をモデル事業として実施、さらに告示直前に18歳までの医療費無料化を公約として発表しました。まさに全方位に配慮した政策なのでしょうが、敢えて次の2点について苦言を呈します。

一つ目は街づくり計画への市民参加の手法についてです。山下ふ頭再開発検討委員会では、地域関係団体委員が参加にすることなり、検討委員会が利害調整の場になってしまうと異議を唱えた委員長が辞任しました。また、カジノのときに市民の意見を無視して進めて失敗したことを教訓に、市民参加の強化を明記するべきという意見もありましたが、結局、玉虫色の答申となりました。今後の事業計画の策定に市民参加をどのように保障するのか大きな課題を残した結果となりました。

もう一つは、新聞報道への介入問題です。昨年、横浜市は5つの報道記事に対して「削除や公平性を求める」文書を交付しました。10/25の共同通信の「東京から横浜に引っ越したら保育料が2倍!」という記事に対して、横浜市の保育料がことさら高いという印象を誘導するとして削除を求めました。11/20と12/11の神奈川新聞の横浜国際プール再整備計画案に関する記事に対しては、プロバスケットボールBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」のための再整備という一方的な見解で、読者に偏った印象を与える内容だとしています。12/5の神奈川新聞の「開かれた横浜市庁舎を求める会」の請願書提出に関する記事に対しては、極めて一方的で読者に誤解を与えかねないと言っています。12/10の山下ふ頭再開発検討委員会に関する神奈川新聞の記事に対しては、事業計画等へ市民参加の在り方について委員会の少数意見を重視した記事内容だとしています。
山中市長は当初、市の文書の存在は知らないと自らの関与を否定していましたが、1/22の定例会見では、「抗議文ではないというのが文書を見た印象」「疑義があった場合あるいは市民に誤解を与えるような表現があった場合に質問することはあってもいい」と述べています。報道機関への圧力ではないということを主張した発言だと思います。報道内容に事実誤認がないにもかかわらず、自分たちの意に沿わない、気に入らないからと市がクレームをつけ文書で回答を求めるという行為は、「忖度」の強要につながると思います。文句を言われないような表現にしようということになりかねません。公権力による圧力と受け取られる行為は慎むべきです。