障害者自立支援法がめざしたもの

 

作業の様子

電機神奈川福祉センター「ぽこ・あ・ぽこ」を見学して

 JR新杉田駅に隣接する「ぽこ・あ・ぽこ」の就労移行支援事業を見学しました。2006年に障害者自立支援法が施行され一般就労の促進がうたわれました。しかし、厚生労働省のホームページによると、一般企業へ就職が特別支援学校からは約25%なのに対して社会福祉施設からはわずか1~2%で大きな課題となっています。「ぽこ・あ・ぽこ」では、この3年間、一般企業への就職率は30%を超えています。法人は労働組合を母体としていますが、企業OBを職業支援員として配置し、障害者が混乱せずに作業を効率よくすすめるための工具の工夫、工賃査定や作業評価の仕組みなど、企業の視点が様々に取り入れられています。ここは就労へのステップアップの場としてだけでなく、離職した場合の受け皿の役割も果たしています。学校から就職した場合、職場が合わずに辞めてしまうとその後のフォローをしてもらえずに困っている人たちも多いそうです。

 この法人では、障害者自立支援法施行以前から一般就労を一つの目的としてきましたが、自立支援法の施行後は一般就労が1.5倍になり成果を上げています。しかし、現在自立支援法に代わって準備されている障害者総合福祉法(仮称)では、一般就労の推進が明記されず福祉施設での就労に重点が置かれていることに、理事長の石原さんはこの事業が後退してしまうのではないかと危惧を抱いています。

 また、同じ場所に横浜南部就労支援センターがありますが、相談件数は急速に増え続けています。以前は知的障害者中心であったのが、このところ精神障害者の相談が半分になり、身体障害者の相談も来るようになり、年間300人以上の就労を支援しています。就労後の長期的な定着支援を含めた質の高い就労支援を継続するには、現在の専門職員3名分の委託費では、せいぜい150人の支援が限度とのことです。

 現在、就労支援は障害者だけでなくニートと言われる若者や失業した中高年とっても重要な課題となっています。福祉に企業の視点を取り入れた「ぽこ・あ・ぽこ」や就労支援センターの実践は、一つのモデルであると思います。

 もちろんすべての障害者に就労の価値観を押しつけるべきではありません。しかし、一般就労を果たすことで自信や喜びにつながっている障害者がたくさんいることも事実です。障害者自立支援法が果たした役割を現場からしっかりと評価する必要があると考えます。