IR誘致最終報告書 ― 政策形成過程での市民とのコミュニケーションが課題―

横浜市はIR誘致に関する最終報告書「横浜IRの誘致に係る取り組みの振り返り」を発表しました。大学教授など6人の外部有識者による考察も含まれています。

市の振り返りでは、経済効果については、事業者から提供された情報に基づく数値だけで、リスク要素を想定しなった。さらに新型コロナウイルスのパンデミックやオンラインカジノの普及を考慮した対応ができなかった。周辺インフラ整備等の費用を示すべきだった。という有識者の指摘に対して、「想定されるあらゆる考慮事項を精査した上で、これらの疑問にしっかりと、かつ早い段階で向き合っていく必要があった」と総括しています。ギャンブル依存症対策については、有識者から諸外国と比べて全く不十分で「おざなりだった」と指摘されていますが、シンガポールでは国が実施しているが日本では事業者と自治体に委ねられているので財源が違うと言っています。林前市長の「白紙」発言については、市と市民との間に齟齬が生じ、唐突に誘致の意思表示が行われたように受け止めた市民が数多くいたと言っています。住民投票を求める直接請求については、市としては法令に基づいた手続きを瑕疵なく進めたとしていますが、有識者からは19万筆を超える署名に対して丁寧な対応が必要だったと指摘されています。

全体的に横浜市の論調は、いろいろ不適切な市民対応があって市民の理解が得られなかったが、もっとうまくやっていればカジノ誘致は可能だったという感じです。前市長の「白紙」発言に関しては、市民の側が誤解したような表現です。実際には市長選挙を前にカジノを争点にせず議論を避けたと言わざるを得ません。「世界最高水準のカジノ」という中身のない言葉で市民の理解を得ようとしたことへの反省もありません。市民へのアンケート等では反対意見が多かったにも関わらずこれを過小評価し、有識者からも設問方法が不適切で恣意的なまとめ方をしたと指摘されています。また、政策形成過程における情報の公開も不十分です。横浜IR協議会は非公開、政策決定に至る庁内の議論の記録もありません。市民は納得できなかったから住民投票を求める直接請求を実施したのであり、市民の意思を無視した前市長と市議会の対応が、市長選挙の結果につながりました。

今後、山下ふ頭の再開発、上瀬谷の旧米軍基地跡地開発と大規模開発が続きますが、計画の進め方、とりわけ市民とのコミュニケーションに大きな課題を残しました。、