公共の福祉の原点に返って、神奈川県の税金の使い方を見直すべき

 現在、神奈川県は新たな総合計画を策定中ですが、「インベスト神奈川」や新幹線新駅誘致などの産業優先から、公共の福祉の原点に返って、環境、福祉、防災など生活福祉を重視した計画に方向転換するべきです。

「インベスト神奈川」−勝ち組企業支援はいらない
バブルの崩壊以降、経済の失速、産業の空洞化に歯止めをかけようと、神奈川県は2004年に「インベスト神奈川」という企業誘致施策を打ち出しました。これは、施設整備や雇用に対する助成、税制面での優遇などをパッケージとしたもので、その目的は、県内の企業の立地件数を過去5ヵ年の2倍にして雇用を創出することでした。
施設整備助成制度は適用期間5ヵ年とし、613億円が予算化されました。ところが、助成額の上限が工場で50億円、研究所で80億円というまれに見る額の大きさのため、5ヵ年の半分も過ぎないうちに不足する事態となり、9月県議会で120億円の補正予算が組まれることになりました。
しかし、企業立地の目標達成率は約63%に過ぎず、しかも県外からの移転は2件だけです。そして、助成は大企業に大幅に偏っていて、中小企業への助成額は1割にも満たない状況です。雇用については、賃金が低く社会保障の不安定な派遣社員やパート労働の非常勤がわずかに増えている程度で、常用雇用は全く増えていません。大企業に税金を与えるというこの助成制度が、地域振興策として本当に役に立っているのか疑問です。
 一方で子ども達が毎日通う県立学校の体育館の耐震診断は、国から実施を求められて、ようやく今回1億1,600万円余の予算をつけるという状態です。これはほんの1例であり、県には他に優先すべき課題が山積しています。社会の格差を助長する懸念のある「インベスト神奈川」は見直すべきです。

新幹線新駅はもういらない
36年前、衆議院での請願が採択されてから、知事を会長とする期成同盟会を中心に寒川への新駅誘致の活動が続いています。滋賀県では「もったいない」をスローガンに、京都・米原間の新幹線新駅計画凍結を公約とした女性知事が当選しました。寒川の新駅については、建設費250億円、道路橋の建設費300億円が見込まれていますが、時代の変遷から、ニーズはむしろ地域間交通に変わっており、新幹線新駅誘致は断念すべきであると考えます。

戦略的環境アセスメント導入を
環境政策を重視した社会構造の転換が急がれます。国際的に戦略的環境アセスメントの導入が大きな流れとなっています。米国は既に1969年に導入。EUでは共通制度化され、各国に法の制定が義務付けられました。
 神奈川県は1980年、国に先駆けて神奈川県環境影響評価条例を制定し、事業アセスを実施しています。しかし、事業実施段階での環境影響評価は実効性に乏しく、計画変更の可能性のある段階から行なう戦略アセスの導入が求められます。東京都や埼玉県ではすでに導入されており、神奈川県でも早急に取り組むべきです。

養護学校の就職率アップを
障害者の民間企業の法定雇用率は1.8%ですが、神奈川県は全国平均の1.49%を下回る全国最下位の1.37%です。
神奈川県内の養護学校の平成16年度の就職率は16.7%です。東京都は30.2%、千葉県は26.6%、栃木県は17.8%、群馬県は43.2%で、神奈川県は1都6県の平均25.0%をも下回る大変低い数値です。地域作業所をはじめ福祉的就労の場が整えられていることも理由のひとつではありますが、自立支援法が施行された中で、就労に結びつく支援や施策が急務です。

県立施設の地震対策を早急に
9月県議会の補正予算に県立高校体育館の耐震診断の費用が計上されましたが、その他の県立施設の耐震診断結果の一覧表を見ると地震対策の遅れに愕然とします。棟別に数えると、大規模補強が必要なものが191棟あります。まだ診断自体が済んでいない建物もありますから、実際にはさらに多くなるはずです。
191棟の中には、磯子工業高校、立野高校、緑ヶ丘高校の校舎や神奈川リハビリ病院の本館と身障者棟、こども医療センターの母親指導棟なども含まれています。
大企業に税金をばら撒いている場合かと呆れてしまいます。