新市庁舎整備、5年遅れることで100億円の負担増は本当か?

「新市庁舎整備事業(仮称)」の公共事業事前評価調書(案)に対して寄せられた市民の意見とそれに対する見解が公表されました。388人の市民が意見を寄せ、そのうちの約57%が整備計画に反対、否定的な意見となっています。

 その主なものは「財政難、少子高齢化の進展が予測されるなかで、巨額な税金を新市庁舎につぎ込むべきではない」「現庁舎は2009年に50億円をかけて耐震補強工事を行い、50年は使えると言っていたのだから、今新市庁舎を整備するのは税金のムダ遣い」「資材や人件費が高騰している東京オリンピック前に建設する必要がない」「広く市民に知らせ、もっと市民の意見を聞くべき」などです。

 これに対して市は、「現市庁舎の抱える執務室の分散化や年間20 億円を超える賃借料負担の解消、危機管理機能の強化などの喫緊の課題を解決するため、早期に整備する必要がある」「仮に新市庁舎の整備が5年遅れれば、100 億円以上の賃借料負担が生じる」と回答しています。5年遅れれば100億円以上の負担増というのが殺し文句のようですが、これは果たして本当でしょうか。

 年間20億円の賃借料負担が解消されると言いますが、だからといってそれが福祉など他の事業にまわる訳ではありません。むしろさらに一般財源から入居開始までに約176億円(ピーク時で年間約51億円)、それ以降も29年間に渡って年平均3.6億円が拠出され、一般財源負担は総額280億円にのぼり、それが他の予算を圧迫することになるのです。

 新市庁舎の整備が5年遅れるということは、建物の使用可能期間も5年後ろにずれるということに過ぎません。市は「新市庁舎は少なくとも50年以上使用する見込み」としていますが、おそらく50年後には、老朽化による大規模修繕や建て替えの話が持ち上がってくるでしょう。早期に建設することが予算削減につながるかのような言い方は詭弁と言えます。

 むしろ、東京オリンピック前の資材や人件費の高騰により建設費が増加すれば、開業48年で現状負担の累積額と逆転するというシミュレーションも成立しなくなってしまうのです。

また、「危機管理機能の強化」は、場所ではなく機能の問題であり、新市庁舎の有無とは関係なく、取り組まなければならない重要課題と認識すべきです。

 横浜市は市民の声に真摯に向き合い、新市庁舎を早急に整備するという基本計画を見直すべきと考えます。