敬老パスについて考える ~持続可能で公平な制度に!~
市長は市長選挙の公約として「75才以上の敬老パス自己負担ゼロ」を掲げました。敬老パス制度は、1974年に始まり、当初は全員無料でしたが、2003年に利用者負担が導入され、高齢化が進むに伴い負担額がアップしてきました。現在は70才以上が対象で、利用できる交通機関は、市営地下鉄、金沢シーサイドライン、市営バスと市内で運行している民営バスです。所得に応じて8段階の利用者負担があり、負担額が4,000円までの利用者が64.1%を占めています。バス事業者は、市からの助成金は一人あたり月15回の利用を想定しているが、実際には20~25回の利用があり、事業者負担が大きいと主張しています。市は今年10月から乗車証を現行の紙製からICカードに切り替えて利用実態を正確に把握し、今後の方策を検討するとしています。
市民の皆さんからさまざまな声を聞きました。「敬老パスを利用しているが、一定の自己負担は必要ではないか、若い人の支援にもっと力を入れるべき」、通学定期代や保育園の送り迎えの交通費も負担が大きいという意見がありました。また、住んでいる地域により利用する交通機関は異なります。主にJRや京急などの電車を利用する人にはメリットはありません。したがって、交付率はコロナ禍の影響がない2019年度以前でも約56%です。75才以上が自己負担0円になっても、今利用していない人に利用が広がるとは思えません。
名古屋市の制度は対象年令が65才以上です。今年2月から制度を見直し、年間730回の利用回数制限を設定しました。ただし、利用できる交通機関を拡充し、これまでは市営の地下鉄とバスでしたが、市内を運行する名鉄・JR東海・近鉄の電車と名鉄バス・三重交通バスも対象となりました。利用者の拡大が予想されますが、コロナ禍で高齢者が外出を自粛している時期であり、新制度の検証にはもう少し時間がかかると思います。
札幌市では対象年令は70才以上で、1万円から7万円の利用上限額によって利用者負担額が決まります。利用者負担は利用上限額が多いほど負担率が高くなります。負担額1,000円で利用上限額1万円を選択する人が40%以上を占めています。利用できる交通機関は、制度を開始した1975年から徐々に拡大していき、交付率は80%を超えています。
超高齢社会において、どこの自治体でも敬老パスの事業費増に苦慮しています。他都市の事例も参考にして、高齢者の移動の自由を確保しつつ、持続可能で公平な制度はどうあるべきか検討する必要があると考えます。