有機フッ素化合物による汚染が広がっている 早急に対策強化を!
有機フッ素化合物(PFAS)は、熱に強い、水や油をはじく、燃えにくい、汚れを防止する等の性質があり、焦げ付きにくいフライパンや食品の保存容器、衣類、化粧品、消火剤など生活に身近なところで便利に使われています。一方で、「永遠の化学物質」と呼ばれていて、自然界でほとんど分解されず、環境汚染や健康被害(発がん性等)が指摘されています。PFASは1万種類以上あるということですが、現在は古くから使われてきたPFOS、PFOA、PFHxSの3種類について、国際条約で製造・使用・輸入が禁止されています。日本では、PFOSとPFOAについて、水道水中の暫定目標値が合算で50ナノグラム/ℓ以下に設定されています。PFHxSは要検討項目として目標値は設定されていません。
沖縄では2016年から米軍基地由来の有機フッ素化合物汚染が問題になっていますが、日米地域協定が障害となって原因特定に至らず汚染が続いています。県内でも2020年ごろから座間市や相模原市で暫定目標値を超過するPFOS、PFOAが検出されました。特に座間市では水道水に地下水を利用しているので、市民に不安が広がりました。米軍は厚木基地内でPFOSを含む泡消火剤を放出したことを認めましたが、立ち入り検査ができないため、原因の特定は困難ということになっています。横須賀市でも米軍基地の排水からPFOS、PFOAが高濃度で検出され、米軍はPFASを吸着するフィルターを設置しました。しかし、昨年10月に横須賀市に知らせずにフィルターの稼働を停止していたことが判明し問題になっています。県外でも横田基地周辺や東広島市の米軍弾薬庫周辺などで暫定目標値を超える数値が報告されています。また、米軍基地のほかにも、化学工場や半導体工場の周辺でも汚染が検出されています。横浜市では、3か所の浄水場でPFOS、PFOA、PFHxSについて測定を行っていますが、これまで暫定目標値を超過したことはありません。
飲料水だけが問題なのではなく、農薬にPFASが成分として含まれている場合もあると指摘されています。分解されないので土壌に蓄積されていきます。アメリカではトウモロコシなどから高濃度で検出されています。魚や貝から検出されたという報告もあります。内閣府食品安全委員会の専門家会議「PFASワーキングチーム」は、食品や飲料水などから摂取する許容量について、1日に体重1キロ当たり20ナノグラムと指標を提示しましたが、これは欧州食品安全機関の64倍です。EUでは有機フッ素化合物の全面禁止を検討しているそうです。
昨年、町田市の市営駐車場で泡消火剤が誤って流出し、河川がPFOSで汚染されました。これを受けて都が都営施設すべてを調査したところ、30施設でPFOS を含む消火剤が設置されていました。都は早急に消火剤の交換を進めるとともに、民間施設での交換に費用の一部を補助することを令和6年度予算案に盛り込んでいます。横浜市では、誤ってPFOS を含む泡消火剤を流出させた場合には、市に報告することになっていますが、流出してしまってからでは遅いので、民間も含めて実態を調査し、交換を促進する方策が必要です。