豊かな地域福祉をつくるために ~大規模化して効率化でいいのか?~

高齢になっても障がいがあっても住み慣れた地域で暮らし続けることができるように、家事や介護のサービスを提供する活動をしている団体にお話を伺いました。

17年前の設立のときに一番に掲げた理念は、介護保険の対象にならない或いは介護保険の時間内では足りないなど、制度から外れるサービスを提供して地域福祉を豊かにするということでした。公的制度外のサービスをいわゆる「自主事業」として、使う人の立場に立ってできるだけ安価に提供するのがモットーです。介護保険と併用することで在宅生活を維持することが可能になります。現在、全事業の67%が自主事業です。しかし、自主事業だけでは経営が厳しく、事務所を維持し事業を継続するためには、介護保険や自立支援など公的制度による事業が不可欠です。このように地域には小規模だけど、地域に根ざした活動をしているNPOや市民事業が多様にあります。

2024年に介護保険制度が改定されます。2025年には団塊の世代が後期高齢者になり、財源不足、人材不足などさまざまな問題が浮上しています。そのような状況に対して、事業所を大規模化して効率化を図るという方向が示されています。小規模事業者にとってはますます厳しい状況です。介護は工場で物を製造するのとは違います。大規模化で効率化とはあまりにも乱暴な発想ではないでしょうか。2000年に介護保険制度が始まったとき、これまでの措置による福祉との大きな違いは利用者がサービスを選べることだと言われました。小規模事業者の切り捨ては、利用者の選択肢を少なくし、豊かな地域福祉づくりに逆行するものです。今後も改定の議論を注視していきます。